おひとりさまの死後の手続きはどうする? 死後事務委任契約

~死後に安心できる準備をしておく~

人は何も残さずに死ぬことはできません。
最低でも自分の亡骸を火葬し埋葬してもらわなければなりません。
それはだれかに依頼するしかないのです。
何らかの財産をもっていれば、処分してもらうことが必要になります。

死後事務委任契約」はそういった手続きを取り決めて誰かに依頼する契約です。
具体的にどうやってほしいかを明確にし、だれかにお願いすることが目的なのです。

美濃加茂公証役場のサイトによれば、次のように定義されています。

委任者(本人)が第三者(個人、法人を含む。)に対して、亡くなった後の諸手続、葬儀、納骨、埋葬に関する事務等に関する代理権を付与して、死後事務を委任する契約

1 死後事務委任契約の具体的内容

同サイトでは、死後事務の内容はどういうものかについても触れられています。

①医療費の支払いに関する事務

②家賃・地代・管理費等の支払いと敷金・保証金等の支払いに関する事務

③老人ホーム等の施設利用料の支払いと入居一時金等の受領に関する事務

④通夜、告別式、火葬、納骨、埋葬に関する事務

⑤永代供養に関する事務

⑥相続財産管理人の選任申立手続に関する事務

⑦賃借建物明渡しに関する事務

⑧行政官庁等への諸届け事務

ほかにも、訃報をだれに連絡するか、部屋や家財の処分をどうするかといったさまざまな事務があります。
可能な限り網羅しておく必要があります。

私も親が亡くなったときに死後事務をほぼ一人でこなしましたが、けっこうたいへんな作業でした。
親族に頼める方はよいのですが、おひとりさまの場合、自治体は遺体の処理くらいしかやってくれません。
事前にだれかに頼んでおかないとさまざまな方面に迷惑をかけることになってしまいます。

 遺言との併用が有効

遺言は財産の引継ぎや身分関係の確定にかかる申送りです。
なので、たとえばどこの葬儀社に頼むとか、散骨してほしいといった手続きにかかる事項について記しても法的拘束力がありません。

遺言と死後事務委任契約書を合わせて残しておくことが、死後の後処理をスムースに進められる効果につながるのです。

 費用

問題は、費用がそれなりにかかることです。

死後事務委任契約書作成に20~30万円、受任者への報酬として50~100万円が相場のようです。
死亡すると預貯金が凍結されて引き出せなくなることに備えておかなければなりません。
ある程度の預託金(ケースバイケースですが100~200万円という見解もあります)を受任者へ渡す必要もあるのです。

4 依頼する相手

「死後事務委任契約」は、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家と結ぶケースが多いようです。
しかし、とくに資格は必要ないので、友人や知人に委任することも可能です。
残念ながら使い込みの事例があるようなので、信頼できる相手であることが条件となります。

費用を節約しようと友人・知人に頼むにしても、重い責任を強いるのと相当な負担をかけるので頼みにくいという方もいるでしょう。
だれに委任するかが一番難しい問題なのかもしれません。

解決策として、安い費用で委任できる互助会のようなコミュニティを立ち上げることも考えられます。

「死後事務委任契約」については書籍が何冊か刊行されているほか、ネット情報も数多くあります。
臨死にあたって頼めそうな相手がいない方は、ぜひ今のうちからご自身で勉強しておくことをおすすめします。

「自分のことは最期まで自分でやるから何とかなる」と考えている方も、亡くなってからでないとできない手続きもあります。
「死後事務委任契約」をひとつの選択肢として検討する価値はあるのです。