不動産登記をしないとどうなる?

~後にツケを回さないよう今やることが大事~

住宅など不動産を購入した場合や新築した場合、所有名義人の登記(所有権保存登記、所有権移転登記)をします。住宅ローンを組むなら抵当権等の登記がなされます。登記は不動産業者がサポートしたり、金融機関が条件としたりして必然的に行われます。
一方で、必要な登記をしないでいるケースもみられます。

そもそも登記は義務ではないのでしょうか?

不動産の表示に関する登記は義務があり、権利に関する登記は任意とされています。
つまり、住宅を新築した場合や、増築あるいは取り壊しをした場合などは、1カ月以内に登記を申請しなければなりません。義務を怠った場合は10万円以下の過料が課される可能性があります。
一方、所有権や抵当権などの権利は登記申請の義務はありません。

登記をしないでいる例

㋐表題部

未登記のままにするケース
建物を新築した場合などでまったく登記をしないケースです。住宅ローンを組まない場合などで、法務局や地方自治体からの督促等もないため、登記をしないでいる方がいます。表示登記にかかる費用は土地家屋調査士へ依頼する場合は10万円前後が相場のようなので、節約の意味もあるのかもしれません。

表示変更登記をしないケース
増築等による床面積変更などの登記をしないケースです。

滅失登記をしないケース
取り壊して建物が存在しなくなったのに滅失登記をしないケースです。

㋑権利部(甲区)(所有権に関する事項)

所有権移転登記をしないケース
相続があったのに登記を先延ばしにするケースでとくに多くみられます。
被相続人の死亡届にもとづき、地方自治体から「相続人代表者指定届」を提出するよう案内文書が届きます。提出後は届け出た代表者に納税通知書が届くようになります。代表者に限らずだれかが固定資産税を払っていけば、相続登記をしなくても地方自治体等から督促等を受けることはありません。

なお、2024年から相続登記が義務化されました(「相続不動産登記が義務になる」参照)。

住所や氏名の変更登記をしないケース
引っ越しや改姓をしたのに変更登記を先延ばしにするケースです。

なお、2026年4月までに、住所や氏名の変更登記の申請の義務化されます(「相続不動産登記が義務になる」参照)。

㋒権利部(乙区)(所有権以外の権利に関する事項)

抵当権抹消登記をしないケース
住宅ローンなどが完済すると金融機関が抹消登記に必要な書類を交付してくれます。すみやかに抹消登記するよう案内されますが、急を要するわけではないので先延ばしにするケースです。

登記をしないことによるデメリット

売買の妨げになる

不動産を売却するとき、現在の所有者で登記されていない場合は実態に合わせる登記がまず必要となります。未登記なら登記する費用がかかってしまいます。未登記のままでの売買も可能ですが、たいていは買主が嫌がるか、余計な費用がかかる分売却価格が下がってしまいます。

融資を受けにくくなる

融資を受けるときに抵当権等を設定する条件となった場合、未登記では設定できず、まず登記することを求められます。未登記のままなら底地の土地の処分性が下がるため評価も下がってしまい、融資額も下がる可能性があります。

相続の際に面倒になる可能性がある

登記費用を相続人が負担しなければならなくなります。また、数十年放置した場合など、法定相続人を探したり交渉したりしてかなりの費用や時間がかかる可能性が出てきます。

所有権を主張できない

登記しないと対抗要件がないため、たとえば借地の場合、地主に対して未登記建物の所有権を主張できません。その場合は地主が求めてきたら取り壊さざるを得なくなります。

必要書類の取り寄せ等に時間がかかる

後日、登記が必要になった場合、必要書類の紛失や期限切れなどにより、再度の取り寄せるなどに時間がかかることがあります。

余計な費用がかかる

古い建物が未登記の場合は、建物の再調査が必要になるケースもあり余計な費用がかかる可能性があります。土地家屋調査士や司法書士へ依頼する登記費用も当然にかかります。

手間や費用を惜しんで必要な登記を先延ばしすることは、後々生じる可能性のあるデメリットを大きくします。今やるべきことは今やることが大切なのです。