個人事業主・フリーランスのための年金対策
~老後の生活資金準備は早めに~
個人事業主の年金は、基本的に国民年金だけです。納付が必要な国民年金保険料は、1カ月あたり16,520円です(2023年度)。まとめて前納すると、割引になります。20歳から60歳まで納付した場合の満額の受給額は1カ月あたり66,250円(67歳以下の場合)です。
厚生年金や企業年金が上乗せされる会社員と比べると、年金だけでは老後の生活が厳しくなります。事業収入があるとはいえ、いつまでも働き続けられるわけではありません。
そこで、個人事業主は、年金だけでは不足する老後の生活資金を、自分で準備する必要があります。方法はいくつかあります。
①付加年金
国民年金保険料に加え月額400円を納めると、「200円×付加保険料を納めた月数」で計算された金額が、老齢基礎年金に上乗せされます。2年間納めれば400円×24カ月=4,800円となるので、受給額が200×24カ月=4,800円の上乗せとなり、元が取れます。ただし、国民年金基金加入者は付加年金を納付できません。
②国民年金基金
あらかじめ将来の受給額が決まっている確定給付型です。予定利率は1.5%(2023年現在)です。終身年金A型・B型は一生涯受給できます。
掛金月額は、選択した給付の型、加入口数、加入時の年齢によって決まります。68,000円が上限です。ただし、個人型年金(iDeCo)の掛金と合わせて68,000円以内となります。
年金額は加入口数によって決まります。給付の型は、終身年金A型・B型、確定年金Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅲ型・Ⅳ型・Ⅴ型の7種類があります。1口目は、終身年金A型(15年間保証)、B型(保証期間なし)のいずれかを選択しなければなりません。2口目以降は任意の型を選択できます。受給開始は、終身年金A型・B型、確定年金Ⅰ型・Ⅱ型は65歳、確定年金Ⅲ型・Ⅳ型・Ⅴ型は60歳となります。
なお、いったん加入すると任意に脱退できません。国民年金保険料を滞納すると、その期間の基金の年金給付は受け取れなくなります。また、付加年金加入者は加入できません。
③個人型年金(iDeCo)
掛金の運用先を自分で選択し、投資信託などの金融商品で運用します。給付額は運用実績次第で変動します。
掛金月額は5,000~68,000円の範囲(1,000円単位)で任意に決められます。会社員等と比べて大きくなっています。ただし、国民年金基金の掛金や付加年金と合わせて68,000円以内となります。
受け取り方法は、一時金、年金(5~20年)、一時金と年金の併用を選択できます。
なお、原則として60歳までは受け取れず途中解約もできません。元本割れのリスクがあり、一定の手数料がかかります。また、国民年金を滞納している間は掛金の拠出ができません。
④小規模企業共済
常時使用する従業員数が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主などが、退職時等に掛け金に応じた共済金を受け取れる制度です。事業の廃止等を理由に受け取る共済金Aと、老齢給付等を理由に受け取る共済金Bがあります。
掛金月額は1,000~70,000円の範囲(500円単位)で任意に決められます。国民年金基金や個人型年金(iDeCo)と別枠で加入できます。
受け取れる共済金は、基本共済金と付加共済金の合計金額となります。基本共済金は、掛金月額、掛金納付月数に応じて、共済事由ごとに小規模企業共済法施行令で定められている金額です。付加共済金は、毎年度の運用収入等に応じて、経済産業大臣が毎年度定める率により算定される金額です。
受け取り方法は、一時金、年金(10年または15年)、一時金と年金の併用を選択できます。分割の場合は、共済金の額が一定以上であるなどの要件があります。
なお、掛金納付月数が12カ月未満の場合は解約手当金を受け取れず、240カ月未満の場合は解約手当金が掛金合計額を下回ります。
さらに、掛金の範囲内で事業資金等の貸付が受けられる制度もあります。
⑤節税効果
それぞれ、掛金拠出時と受給時に税制上のメリットがあります。
ほかにも、個人年金保険やNISAなどを活用する方法もあります。自分のライフプランに合わせて検討することが大事です。できるだけ早めに始めることで、より多くの金額を準備することができます。