おひとりさまが身体不自由になったときにサポート 財産管理等委任契約
~判断能力はあるが体が不自由になったときの備え~
病気や怪我などで体の自由がきかなくなり外出ができなくなってしまった場合どうしますか?
あるいは寝たきりになってしまうこともあるかもしれません。
それまで自分でふつうにやってきたことを、だれかに頼んでやってもらわなければならなくなるのです。
家族がいれば頼めるかもしれませんが、おひとりさまは容易ではありません。
認知症などで判断能力が低下した場合は「任意後見制度」が使えますが、判断能力が正常なうちはどうすればよいのでしょうか?
「財産管理等委任契約」が考えられます。
自分の財産管理や療養看護などについて、信頼できる人に代理権を付与して代わりにやってもらうというものです。
1 依頼できること(例)
依頼できるようにすることの例を挙げると、以下のようになります。
①預貯金の出金
②公共料金等の支払い
③印鑑証明書や戸籍謄本などの取得
④生活に必要な物品の購入
⑤福祉サービスの利用手続き
⑥医療機関や福祉施設への入院・入所手続き
⑦介護認定手続き
2 依頼する相手
委任する相手にはとくに資格は必要ありません。
親族でも知人でも信頼できる人ならだれでもよいのです。
頼める人が見当たらない場合は、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に委任するケースが多いようです。
3 委任契約締結を推奨
任意契約なので何を委任するかは自由に決められます。
トラブル防止のためにきちんと委任契約を結び、できれば公正証書にしておくと安心です。
まだ元気なうちに契約するので、もし今後、自分で行うことが困難な状態になったら代行を委任するという趣旨の契約になります。
4 留意すべきこと
いくつか留意点をあげておきましょう。
①監督者がいないので、受任者が使いこみや背任行為をしてしまう可能性は否定できません。
実際にトラブルになった事例もあるようです。
判断能力が正常な前提なので、委任者本人がきちんとチェックしていく必要があります。
預金通帳などを預けっぱなしにせずその都度渡して返してもらうといった対応が必要です。
財産管理監督者を指定することができるので、信頼できる第三者に依頼してもよいでしょう。
②受任者が行った行為は正当な代理権にもとづいた法律行為になるので、委任者本人があとで取消すことはできません。
必要に応じてその都度きめ細かい指示をしなければならないこともあるでしょう。
③将来判断能力が低下したときに備えて、「任意後見」へ移行する旨を契約条項にうたっておくと安心です。
「任意後見」が必要になるころには判断能力が低下してきているので、早めに備えておく方がよいからです。
信頼できる受任者に認知症になってもそのまま任せられるメリットもあります。
定期的な電話や訪問で健康状態や生活状況を確認してもらえる「見守り契約」をセットするのがよいという意見もあります。
④財産管理等委任契約書を提示しても対応してくれない金融機関があります。
任意代理人届出を事前にしておけば応じてくれるところ、任意後見とセットだと応じてくれるところなどさまざまです。
事前に取引している金融機関に確認しておく必要があります。
⑤財産管理に当たらないため、手術や延命治療など医療行為にかかわる同意をすることはできません。
⑥費用や報酬の支払いについても任意に決めることができます。
代理行為のためにかかった費用は委任者が実費負担することになるでしょう。
報酬はもちろん無報酬でもよいのですが、月当たり1~5万円くらいが相場のようです。
備えあれば憂いなしです。
今は必要性を感じなくても「財産管理等委任契約」という形があることを覚えておくとあとで役に立つかもしれません。