融資の仲介・あっせん・口利きは無意味

~ふだんからの地道な経営努力が大事~

テレビドラマ「罠の戦争」で、主人公の国会議員(草彅剛)が、地元の中小企業の経営者から陳情を受けました。
銀行の融資を受けたいので取り計らってほしいというのです。
そこで主人公は自分の名刺を渡し、銀行の支店長に見せるようにと話します。
後日、おかげで融資を受けることができたとその経営者から礼を言われる場面がありました。

①無登録者の融資仲介は違法

金融機関から融資を受けたい場合に、国会議員等に紹介してもらうことが実際に有利にはたらくのでしょうか?

数年前にある国会議員の政策秘書が日本政策金融公庫に融資の仲介をして見返りに手数料を受け取ったことで有罪判決を受けました。
貸金業登録がない者による融資の仲介は違法というわけです。
当時は、仲介により融資が早まった事例があったとか、公庫が専門窓口を置いて優遇しているといった報道もありました。

②日本政策公庫の見解

この事件を受けて公庫は、2022年4月にプレスリリースをして以下のように表明しています。

  • 国会議員等から紹介を受ける際の専門窓口は存在しないこと
  • 審査判断や審査日数に国会議員等からの紹介は影響を受けていないこと
  • 国会議員等からの要望が多かったので、担当支店の審査担当役席名を国会議員等に教えていたこと
    申込企業の同意を得て先に審査結果を国会議員等に伝えていたこと

そして3つめのやり方では誤解を招きかねないとして、
以後は国会議員等からの紹介があっても特別対応をしないことを明確にしています。
支店の担当者等は教えないとともに、審査結果は申込企業にのみ伝えることにしたのです。

③金融機関の実際の対応

私の経験からしても、金融機関は、たとえ国会議員等からの紹介や仲介があっても、是々非々で審査をします

実際、融資をお断りするケースが多々ありました。

個人的な見解ですが、議員紹介案件は、もともと簡単に融資できる企業内容ではない先が多い気がします。
融資の可否のいかんにかかわらず手間暇をかけた審査が必要になります。
だから審査日数を早めることは物理的に容易ではありません。

よって、冒頭のテレビドラマのような効果は実際にはないと言ってよいでしょう。
議員紹介で融資受けることができた企業は、そもそも紹介があってもなくても融資を受けられたのです。
紹介があったことが審査判断に影響を与えたという事実はまったくと言っていいほどないのです。

④日常的経営関与の立場にある先からの紹介は有益

ではだれからの紹介であっても無駄なのかというとそうではありません。

たとえば公庫で言えば、

商工会・商工会議所、生活衛生同業組合、税理士、金融機関等、お客さまの経営に関与する立場にある者として、公庫が融資判断等において情報交換の必要性があると認める者」です。

マル経融資は商工会・商工会議所からの推薦が必要条件です。
生活衛生融資では生活衛生同業組合の資金証明書が必要条件となるケースがあります。
税理士は顧問先企業の経営上必要な場合は紹介状を書いてくれることがあります。

これらの機関は、金融機関と協定を結ぶことにより顧客を紹介することも行っています。

いわば、日ごろから経営に関係してくれている先は頼りにしてもらってよいのです。

⑤専門家の支援による経営強化が大事

経営が思わしくなくなり融資がどうしても必要だからと焦る気持ちはよく理解できます。
しかしそれでは遅いのです。

「転ばぬ先の杖」という言葉を思い出してください。
普段から経営を指導してくれる専門機関、相談に乗ってくれる専門機関を確保しておきましょう。

経営にプラスになる機関をうまく活用して経営内容を可能な限り盤石にしておけば虎の威を借る必要はなくなるのではないでしょうか。