ボランティア活動をビジネスにする

~三方よしが実現できる方法の模索~

かつての上司と飲む機会がありました。
今は再雇用の立場にありつつ副業をしているそうです。

「要約筆記」という聞きなれない仕事です。
耳が不自由な方に対して、目の前で話されている内容を要約して文字にして伝える。
いわば通訳のような仕事のようです。

紙やホワイトボードに手書きする。
パソコンに入力する。
OHPシートにペン書きしてスクリーンに映し出す。
さまざまな方法があるそうです。

耳が不自由な方の会話手段としては手話がまっさきに思いつきます。

しかし、後天的に耳が不自由になった方や、難聴になった方などは、事情が違うようです。
手話を使って完全なコミュニケーションをとることがなかなか難しい方がいます。
そもそも話すことができるので手話を使う必要性が少ない方もいます。

そこで、たとえば会議や講演などで話されている内容を、その場で文字にして伝えるのです。
リアルタイムで情報が頭に入ってくるようになります。

「要約筆記」の仕事をするためには、とくに資格は必要ありません。
厚生労働省が推奨する養成プログラムを受講し終了することなどが条件とされているようです。

報酬は自治体など公的な性格の強い組織から支払われるケースがほとんどだそうです。
1回あたり数千円から1万円程度といいます。

かつての上司が言うには、けっこうな重労働になるそうです。
話し言葉をそのまま文字起こししても文章としてわかりにくくなってしまいます。
外国語の通訳のように話を聞きながら頭でまとめて即座に文字を書いてという作業になるのです。
数人で組んで十数分くらいで交代しながら従事することもあるとのことです。

「要約筆記」に従事されている方は、有償ボランティア的な仕事として受け止めているようです。
耳の不自由な方から感謝されることで満足を得ているというのが実態ではないかと推測されます。

重労働のうえに報酬が多くないので、要約筆記者の成り手は増えません。

一方でニーズはけっこう多いと聞きます。
となると、相応の報酬が得られれば、成り手が増えて耳の不自由な方のニーズにこたえられ、より喜ばれるのではないでしょうか。

要約筆記者が作業に見合った報酬をもらい、生業として成り立たせることができるためには、どうすればよいでしょうか?

まず、受益者となる耳の不自由な方から直接報酬をいただくことが考えられます。
ただ、抵抗感をもつ方が少なくないかもしれません。
報酬を支払える方はよいが、そうでない方はそもそもサービスを受けられなくなってしまう懸念が生じてしまうからです。

となると、お金の出所を変えればよいのではないかという考え方が出てきます。
スポンサーを募ることはいかがでしょうか? 

たとえば、補聴器を扱う事業者。
耳の不自由な方に新製品のモニターになってもうとか、ニーズ調査に協力してもらうのです。
スポンサーに対して有益な見返りを提供できるのなら、スポンサーにとっても良い話となります。
また、社会貢献に力を入れている企業にスポンサーになってもらうなら、その企業のイメージアップに寄与することができそうです。

私が言いたいことは、ボランティア分野で金儲けをしようという話では決してありません。
従事者、受益者、報酬提供者といったステークホルダー全員が喜べるような仕組みをつくれれば理想的です。
そのためにはどうしたらよいだろうか考えることは有意義なのではないかということです。

みなさんもよいアイデアがないか考えてみてはいかがでしょうか。