外注(アウトソーシング)について考える
~外注する業務の見極めと外注先の選定・管理が重要~
外注を活用している中小企業は少なくありません。たとえば、ネジ製造工場がメッキの工程を専門業者へ委託するケースがあります。製造業に限らず、自動車小売業が自動車の整備や修理を専門工場に発注することもあります。チラシやホームページの制作を専門業者に外注することは幅広い業種で行われています。
外注とは、日本産業規格(JIS)で次のように定義されています。
「自社(発注者側)の指定する設計・仕様・納期によって、外部の企業(受注者側で、外注企業、協力工場ともいう)に、部品加工又は組立を委託する方法(JIS Z 8141-1210)」
①外注の目的
㋐主業務(コア業務)に専念
経営資源に制約がある中小企業は、自社ですべての業務を行うことができるとは限りません。自社で対応できない業務や付随的な業務などを外部に委託することで、主業務(コア業務)に経営資源を集中することができます。その結果、企業活動を効率的・効果的に行うことができ、生産性や収益性の向上の実現にもつながるのです。
㋑自社にない専門的な技術やノウハウの活用
高度な技術やノウハウは、自社で新たに設備や人材を投入して獲得するより外部の既存のものを利用するほうがコスト面で有利といえます。
㋒コスト削減
業務によっては、自社で行うよりも、その業務を専門的に行っている企業のほうが低コストでできるものがあります。専門的に行っている企業のほうが、技術やノウハウを蓄積できコストを下げることができるからです。そうした外部の企業に委託することでコスト削減につなげることができます。
㋓需要変動の緩衝、生産能力の調整
季節変動がある製品・商品や、景気や社会情勢などにより需要が変動する場合があります。ピーク時に合わせた設備や人員を常時抱えることは非効率的です。ピーク時に不足する分を外部の経営資源で補うことで調整を図ります。
②外注のメリット
①で述べたことと重複しますが、次の通りです。
㋐自社の経営資源を本来業務に集中できる
㋑自社にない外部の技術やノウハウを取り入れられる
㋒過剰投資を回避できる、固定費がかからないといったコスト削減ができる
③外注のデメリット
㋐自社の経営資源の成長や蓄積に結びつかない
自社で行えば、自社の人材の育成や、専門的な技術やノウハウの蓄積につながりますが、外注ではそうした効果は期待できません。
㋑管理コストがかかる
外注先の管理には社内とは異なるコストがかかります。外部なので進捗状況の把握が容易ではありません。また、社内でないため意図が簡単に伝わるとは限らないがゆえにコミュニケーションのコストもかかります。
㋒要望通りに動いてくれるとは限らない
外注先が繁忙時期なら納期までに間に合わせてもらえないこともありえます。期待する品質を実現できるかどうかは外注先の能力によることになります。また、外注先の経営状態を把握できるとは限らないので廃業や倒産により外注先を失ってしまうリスクもあります。
④外注先の選定・管理
以上述べたように、外注先は社内でなく外部であるため、きちんと選定し管理していく必要があります。
㋐外注に適した業務を見極める
外注するかどうかについては、メリットとデメリットを比較して検討する必要があります。何よりも主業務(コア業務)の生産性や収益性の向上につながることが大事です。求められる質や量、技術やノウハウ、コスト、リードタイムなどを考慮して見極めることになります。
㋑希望通りにしてもらえる能力がある先を選定する必要
品質、納期、コスト、協力振り、経営安定性などの面から、自社の要望をかなえられる能力があるかどうかをきちんと見定めなければなりません。
㋒必要に応じ指導
要望を的確に伝え理解してもらうことは当然ですが、必要なら指導をして外注先の能力を確保することも管理方法の一つです。
㋓自社の企業秘密が漏れないようにする
信用できる外注先を選定し、必要なら機密保持契約やモニタリングなどにより適切に管理していくことが大事です。
優秀な人材を確保できない、自社の弱みを克服したいといった場合にも、外注の活用が解決策になることがあります。外注を適切に理解し活用することは、自社の維持や成長に結びつけられるといえます。