効率よく成果を出す
~長時間労働は百害あって一利なし~
2023年3月の第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は盛り上がりを見せました。
日本は米国を下し、2009年以来3大会ぶり3度目の世界一を果たしたのです。
大谷選手やヌートバー選手といった一人ひとりの選手の能力の高さと、栗山監督の優れた采配がもたらした結果でしょう。
以前からよく日米の野球チームの相違点が指摘されています。
米国チームは、選りすぐりのスター選手がひしめくがゆえに「俺が一番になる」と自分がヒットを打つことを優先すると言われます。
一方、日本チームが重視するのは、チームワークを優先し次の番につなげること。
自分がバントで倒れても塁にいる選手を一歩進めて着実に点を取りに行くという考え方です。
日本人のもつ協調性、同調性の強さが功を奏するわけです。
しかし、そうした日本人の特徴が裏目に出てしまうこともあります。
2023年2月14日の日本経済新聞の経済教室欄の記事です。
「勤め人改革」アドバイザー 安田直裕氏が寄稿した「うその勤勉やめ生産性上げよ」から引用します。
日本人は、和を重んじるあまり、同調圧力に屈しやすい。
それゆえに「他人の目を意識し、どうすれば自分に有利かを考えて行動する。
勤め人は人事評価で好印象を得ようと勤勉さを競い合う。
生産性を上げるための本物の勤勉であれば良いが、一生懸命働いているふりをしてしまう。
ムダな仕事を増やし、忙しく見せることに腐心する。」
結果的に「生産性を下げる仕事を増やして報酬を受け取る給料泥棒をつくる。」
勤務者を経験した方なら、自分もそういう人たちを見たことがあるとうなずかれるのではないでしょうか。
とくに管理職に顕著にみられるようです。
不必要な仕事を増やし、残業を増やし、有給休暇を取りにくくする。
多忙な自分に陶酔して自分は仕事ができると勘違いしてしまうのです。
勤務時間が長い=仕事をたくさんやっている優秀な人材だといまだに信じている企業や会社員が多いのでしょう。
そのような上司のいる組織は、一時的には成果が上がったように感じられることがあるかもしれません。
しかし、やがて徐々に疲弊して、より生産性が下がっていくことになるでしょう。
「何のために働いているのだろう」というネガティブ思考に陥ってしまう人が増えていくことにつながります。
「よく働き、よく休め」。
仕事に従事しているときは集中して最大限の成果を出せるように努めるのは当然のことです。
しっかりと休むことによって疲れを取り体調を整えて、明日の仕事に臨む。
それによってクリエイティブな成果を出し、イノベーションも起こせる。
その結果、業績は上がり、従事している人たちは正当に評価されます。
正しい形でそれぞれの達成欲求や承認欲求を満たすことができるのです。
成果を上げることは大事ですが、そこに至るプロセスは、効率のよいものであるべきです。
自分が評価されることももちろん必要ですが、より上位にある者の顔色をうかがっても組織の成果にはつながりません。
組織全体の利益を見る、あるいはその先にある顧客の利益を考える。
どこを見て仕事に取り組むかもきわめて重要です。
正しい方向を全員が見る。
そして日本人が得意なチームワークを発揮すれば、だれもが満足できる成果を上げられるのは間違いありません。