組織のライフサイクル・モデルを知り危機を乗り越える
~組織の成長段階に合わせたマネジメントの必要性~
人は生まれてから幼少期、青年期、中高年期、老年期と進むにつれ、さまざまな出来事に出会い、困難を乗り越えて成長していきます。企業などの組織も同様です。
創業から成長期、成熟期と進み、さまざまな危機を乗り越えて段階的に発展していきます。
組織の発達段階ごとにどのような問題が起こり、どのようなマネジメントにより解決していくのかを説明するモデルがあります。
「組織のライフサイクル・モデル」(リチャード・L・ダフト著「組織の経営学」)です。
組織の規模が大きくなっていく過程で、4つの段階を踏んで発展していくというものです。
①起業者的段階(起業段階)
事業を始めて間もない時期です。
新しい商品やサービスを創出して世の中に送り出すことが主たる活動になります。
創造性や革新性を発揮してどんどん成長していきます。
はじめは従業者が少なく、経営者は技術的なことや営業活動的なことに集中します。
しかし、成長し組織が大きくなるにつれて、経営者個人の能力だけでは管理できなくなっていきます(①の危機)。
そこで、経営者は強力なリーダーシップを振るい、組織を引っ張って乗り越えることを求められます。
経営管理能力も徐々に身につけていく必要があります。
②共同体段階(集合化段階)
経営者の強力なリーダーシップのもと、組織の目標が明確なものになっていき、従業者は一丸となってさらに成長します。
組織が大きくなるにつれて、従業者数は増え、分業制も進みます。
それまでは経営者が組織全体を指揮していましたが、管理限界を超えてしまいます(②の危機)。
そこで、部門ごとにリーダーを置いて、経営者の権限を委譲します。
それぞれのリーダーは、この時期には自分の受け持つ部門について経営者より現場に詳しい存在になっています。
各部門で意思決定スピードが速くなり自律的に事業を進めるようになり成長が促進されます。
③公式化段階(形式化段階)
大きくなった組織を動かすため、規則やマニュアルの作成や、人事制度、業務を円滑に進めるための諸手続きが導入されていきます。
組織は安定的に成長していきますが、業務が形式化していくようになります。
規則を守ることが目的になってしまって顧客より組織維持が優先されるといった困った事象が起きてきます。
また、手続きを守ることにこだわり時間がかかったり硬直的な運用になったりして不都合が生じてきます。
いわば官僚的な弊害が露見するようになるのです(③の危機)。
組織横断的なプロジェクトチームの発足、コミュニケーションの活性化を図るなどの対策により組織に柔軟性をもたせる対策が必要になります。
④精巧化段階(成熟段階)
官僚制除去のために組織の分権化が進み、小さな組織単位での活動が増えます。
それに伴ってチームワークが醸成され、メンバー同士の協調によりプラスの相乗効果が表れてきます。
しかし、組織が大きくなりすぎて事業開始当初の理念やビジョンが忘れられて組織が停滞していきます(④の危機)。
組織内に理念やビジョンをあらためて浸透させたり、組織改革によりイノベーションを起こせる土壌を醸成したりする必要があります。
組織の柔軟性や機動性を維持しながら、新たな商品・サービスの導入や、新規事業などにより、組織を再活性化させるのです。
それによって組織はさらなる成熟段階へと進むことができるようになります。
また、衰退期へ向かわないよう対策が必要です。
組織のダウンサイジングにより維持力を高めるとか、現状に合わせて事業領域を見直すといったことです。
組織がどのステージにあるのか、危機脱却のため必要な対策は何かを、きちんと見定めて適切な行動をとることが求められます。