おひとりさまには遺言は必要ないと思っていませんか?
~遺言の形式を理解して作成し死後のトラブルを避ける~
もし自分が急死したらどうなるのか考えていますか?
私の場合、配偶者も子もおらず両親も亡くなりました。
遺体の火葬や死後の諸手続きなどは、親族である兄が何とかしてくれるかもしれません。
相続人は兄ひとりなので遺産分けで骨肉争う場面は考えられません。
しかし、今後、兄と不仲になる可能性がないとは言い切れません。
いくら生前に兄へ相続させないとわめいたり、メモ書き残したりしたところで、だれもそのとおりにはしてくれません。
確実な方法は遺言を作成することです。
遺言で意思表示しておけば、全額を甥に相続させるとすることもできます。
この場合、子や親と違って遺留分がない兄へは一銭も行くことがありません。
また、慈善団体へ寄付するとか、気に入っただれか他人へ遺贈するとかも自由に決めることができます。
兄へは相続させないと書き、ほかのだれかへ遺贈すると書かなかった場合は、最終的にはすべて国庫へ帰属つまり国のものになります。
1 遺言の種類
遺言(法的には「いごん」と読みます)には、「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類があります。
それぞれ厳格な方式が定められており、不備があった場合は法律上の効力がなくなってしまいます。
①自筆証書遺言
遺言者が、日付、氏名、財産の分割内容など全文を自書し、押印して作成します。
簡単で費用もかからないメリットがあります。
しかし、デメリットもあります。
死後に家庭裁判所の検認が必要です。
申立書の作成や戸籍謄本などの提出などの事前準備や指定された期日に裁判所へ行く手間と、若干の費用がかかります。
手続きには1~2カ月必要です。
残された人に負担をかけることになってしまうのです。
リスクもあります。途中で紛失してしまう。見つけた人が隠蔽してしまう。
独り暮らしの場合は発見してもらえない可能性もあります。
②公正証書遺言
証人となる知人など2人といっしょに公証人役場へ赴き、口述した遺言内容を公証人が筆記して作成します。
方式を誤ることがなく検認や紛失・隠ぺいなどの心配がないメリットがあります。
デメリットは、作成までに手間がかかることや数~十万円程度の費用がかかることです。
③秘密証書遺言
公証人役場で、自筆証書遺言の存在を証明してもらう手続きをするものです。
内容を秘密にすることができますが、方式に不備があれば無効になるというデメリットもあり、あまり利用されていないようです。
2 自筆証書遺言保管制度
さらに、「自筆証書遺言保管制度」があります。
作成した自筆証書遺言の原本を法務局に保管してもらう制度です。
検認が不要で、死亡後に相続人等へ遺言の存在を通知してもらえます。費用が3,900円かかります。
ただし、遺言の方式に不備があれば無効というデメリットは残ります。
いずれも弁護士や司法書士、行政書士など専門家に依頼するのも安心ですが、遺産額により十~数十万円の費用がかかってしまいます。
遺言は、資産の多寡にかかわらず、またおひとりさまであっても作成しておくことが必要な場合があります。
自分の死後に争いが起きないようにしたい。不本意な人に継承されるのを防ぎたい。
個別の事情がある場合は、作成する必要があるのか、どの形式がふさわしいのかなどを早めに考えておくとよいでしょう。
いったん作成してもあとから変更することができます。
とりあえず作成してみようかと気軽に考えてもよいのです。