融資に判断基準はあるのか?

~しっかりした経営をしていることが大事~

金融機関勤務時代に、融資申込された方から、「どういう人に貸してくれるのですか?」という質問を受けたことが何回かあります。
私はあっさりと「きちんと約定通りに返済してくれる人です」と答えていました。
相手はたいていきょとんとされます。

無担保で融資するケースがほとんどだったので返済してくれなければ回収はたいへん困難になります。
返済しない先が増えれば金融機関として成り立たなくなってしまいます。
だからそうした当たり前のことを言ったわけです。

もう一つ多かったのが「融資するにあたって判断基準があるのか?」という質問です。
これに対しては「(明文化された判断基準は)ありません」と断言していました。
スコアリングとかはありますが、何点以下は融資できないという基準はありません。
ただし、スコアが低いと融資を断る確率が高くなるという事実はあります。

また、「赤字だと断られるのですか?」「借入金が多いとだめですか?」といった質問もありました。
答えは、「必ずしもそうとは言えません」となります。

質問された方々にしてみれば、私の回答には煙に巻かれたかのように感じられたことでしょう。
模範的な回答は「(さまざまなファクターを考慮して)総合的に判断します」となります。
これも何を言っているか分からないと言われるかもしれません。

が、実際、融資先は十人十色なので一般的な基準を設けることは難しいのです。
また、基準を作ってしまうと基準以下の先には絶対に融資できなくなります。

「杓子定規な対応をするな! その基準にはどんな根拠があるのか納得できるように説明しろ!」 
苦情を受けて対応に苦慮することになります。

では、「総合的判断」とはどのように行われるのでしょうか?

信用できる人物であると判断できること

まず、融資申込されている方が信用できる方なのかを見極めます
真摯に事業に取り組み、自社企業の維持発展に粉骨砕身している方かどうかです。

信用できる方であれば、きちんと返済してくれます。
業績が悪くなっても事前に相談に来てくれ何とか返済していきたいと考えてくれます。
そういう方だと判断できればよいわけです。

だから、女性だと信用がないのか。
独身だとだめなのか。
資産がないと貸してくれないのか。

そういった心配をする必要はまったくありません。

先の見通しがしっかりあると判断できること

次に、先の見通しがしっかりしているかです。

今は赤字だが、こういう対策をします。
たとえば新規顧客開拓をして売上を増やします。
経費削減に取り組んで利益を増やします。

そしてそういったことが実現可能性ありと判断できることがポイントになります。

ヒアリングで納得できる説明がされているか。
絵に描いた餅ではないことを実証できる資料や客観的根拠があるか。
そういったことが材料になります。

要は、今は苦しいが、この先は挽回して改善できると金融機関が腹落ちできれば融資OKとの結論になります

複数で協議して判断する

こうした判断は、審査担当者、審査担当役席者、つまり人間が行います。
だから人によってぶれることがないとはいえません。
間違うこともあり得ます。

だから、複数で協議をして決め、できるだけぶれないようにする仕組みをつくっています

担保や信用保証協会の保証があると、たとえ焦げ付いても金融機関として被害が少なくなります。
結果として判断を甘くなってしまうケースもあると聞いていますが、大部分の審査従事者は「目利き」能力を鍛えて判断しています。

企業経営者へのアドバイスは一言に尽きます。

ふだんから自社企業の経営に真摯に取り組んでください
自信をもって金融機関に対してアピールできる態勢を整えておくことが何よりも重要と私は考えます。