知らないうちに生産性を低下させている3つの「感」

~やった感、やっている感、やらされ感の無駄をなくそう~

どのような企業でも、できるだけ無駄を省いて業務を効率的に行い、生産性を高めることが必要とされます。とはいえすべての従業員が生産性の高い仕事をしているとは限りません。実際には無駄な仕事をしているに、仕事を適正に行ったように見えてしまう、あるいは見せていることが往々にしてあります。
背景には従業員の思い込みまたは故意が存在しています。それは次の3つの類型に整理できます。

やった感

やる必要がない仕事をやることにより、本来やるべき仕事をやり切れていない、あるいは本来やるべき仕事を妨げていることです。「仕事のための仕事」をしているとも言い換えられます。業績などの成果につながることはなく、自己満足という効果しか得られません。例示すると次の通りです。

㋐無駄な会議・ミーティング・朝礼

従業員を一つの場所に集めて報告や連絡にだらだらと時間を費やすセレモニーになっているなら無駄が生じています。リーダーは全員で情報共有したと満足できるのでしょうが、その時間を本来業務に充てれば成果を上げられるかもしれません。

㋑過度な報告書資料作成

必要以上に細かすぎたり項目が多すぎたり、グラフや見栄えに凝りすぎたり、数量が多すぎたりと、余計な労力をかけることです。

㋒過度な超過勤務

働いている時間が長いほど貢献度が高いなどと誤った認識をもつことです。長時間労働は生産効率が低下することを理解する必要があります。

やっている感

見栄や印象操作のため仕事をやっているふりをすることです。その目的を例示すると次の通りです。

㋐サボっていると指摘されることを回避する

㋑成績が上がらないことの言い訳をつくる

㋒能力が劣っていることをカモフラージュする

はた目にはきちんと仕事をしているように見えるので、しっかり見抜き、誤ってプラスに評価することがないよう注意が必要です。

やらされ感

本当はやりたくないが上位者にやれと言われたから仕方なく仕事をするということです。やる気がないので当然に生産性が落ちます。一生懸命やることはありませんので、成果をあげにくくなります。そもそも企業の方針や上司の指示に腹落ちしていないので、意に反した行動をとられるといったリスクもあります。

以上の3つの「感」を排除して無駄をなくし、生産性を高めるにはどのようにすればよいのでしょうか。

目標を明確にする

まず組織全体の目標を社内全員に対して明確に示し、それをもとにして各従業員の個人目標をはっきり定めさせます。自分の仕事が企業にどのように貢献するのかを知ることで自分の仕事の意味を理解し、やる気につなげることができます。
また、自分が取り組むべき仕事をしっかり見定めて優先順位をつけることで、本来やるべき仕事に集中できるようになります。

自己管理を徹底させる

①で明らかにした目標をもとに、各従業員が自分自身で行動計画を立てるよう促します。自らPDCAサイクルを回して自律的に行動できるようになれば理想的です。

効果的なコミュニケーション

①と②を従業員任せにしてはいけません。リーダーは、各従業員と随時適切なコミュニケーションをとることで目標達成できるよう背中を押す役割を担うことが大事です。個別面談などの機会を設けて行うとよいです。具体的には次のようなことを行います。

㋐進捗が遅れている従業員へのフォロー

㋑各従業員の行動や成果に対して評価や改善すべき点などを伝えるフィードバック

適切な情報共有

組織全体で目標達成することが大事であり、そのためには情報共有が必要です。
進捗状況はもちろんのこと、属人的な手法やノウハウを共有することも効果が見込めます。成果を上げている人の真似をしたり、他人のやり方を参考にして自分で考えて成果を上げられるようになる人も出てきたりします。

また、情報共有は効率性も大事です。会議などは、必要ない従業員を参加させていないか、社内メールや回覧などで済ませられないかなどを検討することが必要です。報告書や資料作成などは、目的や相手、効果に照らして必要最小限の内容にするべきです。

適正公平な評価

適正公平な評価基準をつくり評価を適正に行い納得感をもたせることが大事です。
成果が上がらない場合もあるのでプロセス評価も併用するとよいです。結果のみならず、仕事をどのように行ったのかも評価するのです。ふだんから各従業員の働きぶりを確認したり面談を行ったりする必要があります。

やった感、やっている感、やらされ感は、企業全体の生産性を下げてしまいかねません。経営者は、従業員を責めるのではなく、きちんと仕事をしてもらえるようサポートすることが大事なのです。