リーダーの考えを従業員に腹落ちさせる方法

~多様性を尊重して組織をまとめる~

リーダーが自分の考えを従業員に腹落ちさせることは実はそう簡単ではありません。
組織文化に染まっている正社員は、上位者の意見を表面的には素直に聞くでしょう。だから上位者が間違った指示をしても聞いてもらえる確率が高くなります。ただし、納得しているとは限らないのです。

私は、非正規社員が多数派という職場を経験しました。非正規社員は経歴がさまざまで、考え方も価値観も人それぞれです。
リーダーとして、組織文化が異なる相手を動かすには、従来のやり方が通用しないことが少なくありません。「上位組織からの指示だから」といった権威を示すことはあまり意味がありません。気に入らなければやめてしまう人もいます。
正社員には出世や昇給などのニンジンをぶら下げれば奮起してくれますが、非正規社員への動機づけは難しいものです。

正社員、非正規社員を問わず、リーダーの考えを腹落ちしてもらうにはどうすればよいのか、私の経験談がご参考になれば幸いです。ここでは、細かい指示事項ではなく、組織全体にかかる重要事項を検討する場面を前提とします。

問題点、課題をきちんと把握

組織を動かすうえで、問題点は何か、課題は何か、まずはリーダー自身が現状をきちんと把握します。

事前にキーマン(上位者も下位者も含めて)の意見・要望を個別に聞く

リーダーと同じことを全員が考えているとは限りません。それぞれの立場や考えをよく理解する必要があります。それぞれが何を望んでいるのか、何のためにこの組織で働いているのかなどを把握することが重要です。

ちなみに、この会社を選んだ理由について、有名な会社だから、信頼できる会社だからとか考えるのは正社員のみです。非正規社員は、交通の便がいいからとか、賃金がいいからとか、残業が少ないからとか、自分を起点にする人も多いのです。

キーマンに限ることなく、組織全員の意見や要望を募ってもよいのですが、その場合は収拾がつかなくならないよう注意が必要です。

キーマンミーティング

チームリーダーのみ、リーダー格の非正規社員のみ、あるいは両者といったメンバーで話し合う機会を設けます。それぞれの立場からの意見や要望を効率よく把握できる効果があります。

たたき台を示す

組織の問題の解決策についてのたたき台をつくり、ペーパーなどにして見える形で初めに示します。もちろんたたき台の作成はリーダー自身でなくてもよいのですが、リーダーの意見が反映しているものが望ましいです。

たたき台がないと論点を絞ることが難しくなり、話し合いがまとまりにくくなる可能性があります。また、たたき台は間違っていてもかまいません。たたき台をもとにして参加者全員が考え、意見や要望を出すことで効率よく論点が絞られていき、まとまっていくからです。

意見や要望を積極的に募り、傾聴する

「どう考えるか?」などと質問を投げかけ、意見が出やすいような雰囲気をつくります。たたき台と異なる意見でもどんどん出してもらうことが大事です。

どんな意見でも傾聴することが大事です。採用できる意見は積極的に採用し、採用できない意見には理由を論理的に説明し納得してもらうように心がけます。

お互いが感情的に口論せず冷静に話し合えるよう促します。お互いに相手を理解し違いを受け止めることが大事です。また、意見が食い違う複数の派閥がある場合は、一方にえこひいきしていると取られないよう注意する必要があります。

参加者全員の共通理解を得る

最善の結論を出すのが難しければ最大公約数をめざせばよいのです。全員の意見や要望をあまねく採用することは困難です。結果的にしぶしぶ妥協する人がいてもやむをえません。
言いたいことを言って理解してもらったと思わせることができれば十分といえます。大事なのは、どうすればできるだけ多くの人々がハッピーになれるかを全員で考えることです。

また、いろいろな意見を採用しすぎて整合性がとれなくなることは避けます。軸となる考え方は、意見交換を通して参加者全員の共通理解とさせることが大事です。

周知

ミーティングに参加していなかった全員に説明する機会を設け、周知します。論理的に説明し納得感を高めることをめざします。重要なことはリーダー自ら周知することが効果的です。

事後フォロー

やりっぱなしではいけません。実行後、新たな問題が生じていないか意見を聞く必要があります。形態はミーティングでもアンケートでも状況に応じたものでかまいません。
もし新たな問題が出てきたら、あらためて解決策を検討します。PDCAサイクルを回すような形になります。

リーダーの一方的な押し付けではなく、従業員の意見や要望も尊重して方針を決め実行している。そうした腹落ち感を組織内の全員に植え付けられたら成功といえます。