おひとりさまこそ終活は必須

~元気なうちに準備を始める~

総務省「『遺留金等に関する実態調査』の結果に基づく勧告」(2023年3月28日)から引用します。

今後、超高齢社会の到来と家族のつながりの希薄化を背景に、引取者のない死亡人が増加します。
それに伴い、葬祭等を行う地方公共団体の事務や費用の負担が増大する懸念があるのです。
また、残余遺留金の処理が問題になるケースもあるといいます。

死亡して引取者がわからない場合、市区町村は相続人や扶養義務者がいないかを調査したり、遺留金品を保管したりします。
相続人など後を託す人がいない場合、市町村は葬祭を行い、遺留金品をその費用に充てます。
残りは相続財産管理制度により清算したり、残余遺留金品の弁済供託により借金などの債務を清算したりします。
それでも残る場合は最終的に国庫に帰属することになります。

市町村にとっては、一連の事務処理に相当の手間と費用が負担となります。
加えて、預貯金の引き出しが相続人に優先する法的根拠が不明などとして引き出せなかった事例があります。
供託所から相続人の意思確認が不十分と教示され対応に苦慮している事例もあるとのことです。

市町村が強いられるコストはすなわち納税者の負担になりますから、由々しきことではないでしょうか。

2019年4月1日から2021年10月末日までの引取者のない死亡人件数は、約10万6千件。
このうち遺留金のあるケースは48,479件。
2021年10月末日時点の市区町村における遺留金の保管額は約21億5千万円で、増加傾向にあるといいます。

もはや大きな社会問題になっているのです。

1 死後どうしてほしいかを生前に意思表示

こうした社会的コストをかけないようにするためにはどうすればよいでしょうか?
死後の引取者の当てがない場合や、死後の財産処理を頼める人がいない場合は、生前に自分の意向を明らかにしておくことです。
具体的な処分方法等も示しておくことも必要といえます。

2 遺言

遺言」を作成しておくことがまず考えられます。
遺言を執行する際に不明点や問題点がないよう、また費用が十分捻出できるよう具体的に記述しておく必要があります。
遺留分がある場合はその配慮もすべきでしょう。
不備があると無効になる部分が生じてしまいますから、専門家への相談がおすすめです。

3 死後事務委任契約

死後事務委任契約」もあります。
死後の葬祭の実施、役所等への諸手続きの代行などを弁護士や行政書士などの専門家へ依頼するのです。
相続人等がいる場合でもその負担軽減になるメリットがあります。

ただ、専門家への依頼は数十万~百万円といった費用がかかります。
トラブルになる可能性もあります。
期待した通りに働いてくれないとか、方針の食い違いで相続人の協力が得られないといったことです。
委任した先が経営破綻してしまうこともありえます。

親しい友人や知人へ依頼しておくことも考えられますが、費用やトラブルの発生の可能性は変わりません。

4 生前に必要な準備

解決策とまではいえませんが、次のようなことを生前、意思表示ができるうちに固めておく必要があるのではないでしょうか。

本人がふだんから情報収集しておくこと
死後どうしてほしいかを明確に記録して他の人にわかるようにしておくこと
諸手続きなどを依頼する先を確保しておくことなどです。

みなさんも、よい方法がないか考えてみてはいかがでしょうか。