相続税が課税される相続財産とは何か?

~相続財産のおおよその価額は自分で計算できる~

親などから財産を相続したとき、すべてのケースで相続税が課税されるわけではありません。
基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える相続財産があるかどうかが、課税か非課税かを分ける目安となります。

相続財産は、法定相続人および受遺者(遺贈を受けた者)ごとに次の計算式で算出され、合計したものが全体の相続財産となります。

本来の相続財産

被相続人が亡くなった時点(相続開始時点)で所有していた、金銭に見積もることができる経済的価値のある財産です。現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金、特許権、著作権などです。

被相続人の所得税の準確定申告により相続人が受け取った還付金は、本来の相続財産に含まれます。

また、被相続人にかかる未支給の老齢基礎年金や老齢厚生年金は相続財産にはなりません。3親等以内の同一生計親族が自己の名において支給請求でき、その者の一時所得となります。

みなし相続財産

本来の相続財産ではないが、被相続人の死亡に起因して相続人が受け取った財産です。支払保険料などを被相続人が負担していた場合は、公平の観点から、相続により取得したものと同一視され課税対象となります。

死亡保険金等
被相続人の死亡により相続人が受け取る死亡保険金のうち、被相続人が負担していた保険料相当部分です。同時に支払われた剰余金や割戻金、前納保険料についても対象となります。なお、一時金ではなく年金形式で支払いを受ける場合も含まれます。

死亡退職金等
被相続人の死亡により支給される退職金で、被相続人の死亡後3年以内に支給確定したものです。
また、弔慰金等は、業務上の死亡なら賞与を除く普通給与の3年分、業務上以外の死亡なら半年分を超える部分が対象となります。

生命保険契約に関する権利
まだ被保険者が死亡していない生命保険契約で、被相続人が負担していた保険料相当分です。契約者が被相続人以外の場合、その契約者が課税対象者となります。相続開始時点での解約返戻金の額が対象となります。

非課税財産

相続人が受け取った死亡保険金等または死亡退職金等のうち、500万円×法定相続人の数で算出される額です。法定相続人が複数いる場合は、算出額を各受取保険金額により按分した額が法定相続人ごとの適用額となります。
非課税財産の額は、死亡保険金等と死亡退職金等の合計ではなく、それぞれにおいて計算されます。
法定相続人には相続放棄した者も含まれますが、相続放棄したものが受け取った保険金等については非課税の適用はありません。なお、みなし相続財産は相続放棄した者も受け取ることができます。

債務控除

被相続人の借入金などの債務を承継したり葬式費用を負担したりした場合は、その額を控除できます。例示すると次の通りです。

債務
借入金、未払税金(準確定申告の所属税を含む。延滞税や加算税は対象外)、未払医療費、預かり敷金など。
<控除対象外>非課税財産にかかる債務(生前購入の墓の未払金など)、遺言執行費用など相続開始後に発生するもの、など。

葬式費用
通夜、仮葬、本葬にかかる費用、死体の運搬費用など。
<控除対象外>法会費用、香典返礼費用、墓地の購入費用など。

なお、相続放棄した者は、葬式費用以外の債務控除を受けられません。

生前贈与財産の加算

相続開始前3年以内に、被相続人から贈与を受けた者は、その贈与財産を加算します。加算する額は贈与時の価額です。贈与税の基礎控除(110万円)以下の財産も含まれます。
相続開始の年に被相続人から贈与された財産については贈与税の対象とならず相続税の対象となります。
なお、2024年1月以降の贈与については、加算期間が3年以内から7年以内に延長されるなどの改正がされています。

申告期限までに遺産分割が行われなかった場合

相続税申告期限(相続開始を知った日の翌日から10カ月以内)までに遺産分割が行われなかった場合は各相続人の計算ができません。そのような場合は、各相続人が法定相続分の割合により相続したとみなして計算することになります。
その後、遺産分割され、相続財産の額が異なることになった場合は、修正申告や更正の請求などの是正手続きをします。

将来、相続が発生した場合に相続税がかかるのか否か、また、相続税額を知りたいときは、おおよその額を自分で算出できます。相続対策や相続税支払いの準備を早めにすすめることに役立つでしょう。
なお、自己算出はあくまで目安と考え、正確な金額は税理士に依頼して算出してもらう必要があります。